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4日目 

クモ膜下出血によって、脳の中は血まみれだった。手術でできる限り洗ったが、全て洗いきれるわけではないため、残った血を出すことと、溜まっている脳の水(髄液)を排出するためにチューブを頭に入れていた。
ただ、長期間チューブを入れていると、感染症に罹ったりするため、この日頭のチューブを抜いた。
その代わりに、背骨辺りにチューブを新たにいれ、溜まっている脳の水(髄液)を、脊椎から抜くこととなった。


父は、顔がちょっとむくみ、熱があってだるそうだけど、よく眠っていた。働いている頃から眠りが浅く、睡眠時間も短かった父が、こんなに長く、深く眠っているのを見るのは、母も初めて。
長年共に暮らした父が、倒れている姿を、母がどんな気持ちで見ているのか想像すると、寂しくなる。



戦後の九州の田舎で生まれ、九州の地方都市で知り合って、できちゃった結婚して、ぼくを産んで、会社の辞令で4年おきに全国あちこちへ転勤して、友達から離れた知らない町で心細くてもいつも側にいた父が倒れている。

新聞配達をして高校を出て、就職して、結婚して、ぼくたちに貧しい思いをさせないようにとただひたすら毎日働いて、九州の地方都市に家を建てて、早期退職したら今度は九州の山奥にセカンドハウスを建てた父。

ぼくはまだ胸を張って父を喜ばせられるような職に就いてもいないし、孫の顔も見せていない。まさか父が、57歳と言う若さでクモ膜下出血で倒れるなんて思わなかった。



母と妹を先に帰宅させて、医師に1対1で、聞きたかったことを細かく聞いた。

・意識障害について
クモ膜下出血したのは、右脳。右利きだった父にとって、言語は左脳を使っていたと考えられる。回復すれば、言葉は話せる。
右脳が損傷しているので、感情面で障害が残る可能性がある。
例えば、皆が怒ったりしている感情が分からないとか。

意識が回復する順序としては、
「右手の握り返し(自動運動)」→「視力」→「発声」


・身体障害について
また、左半身に麻痺が残る可能性もある。だが、左脳が無事であれば、右半身は動かせるようになる可能性が高い。


・脳について
脳の90%は水分である。だから、水分を体内に入れると脳が膨らむ。現在、父の脳は右脳が腫れており、脳幹といわれる脳の中心が1cmほどずれている。これが2cm以上ずれて脳幹が損傷してしまうと植物人間になってしまう。そうならないためには、脱水状態ぎりぎりの所まで水分を制限することで、脳の腫れを抑える。
しかし、出血による影響で、脳の血管が収縮しはじめる、「脳血管攣縮」というのが起こる。
水分を押さえて、血流を押さえている所に脳血管攣縮が起こると、脳梗塞などの合併症を引き起こす。それが酷いと再手術も必要となるし、脳が駄目になってしまう可能性もある。
また、脳の水(髄液)の吸収がされていないため、頭や脊椎にチューブを入れて髄液を抜いている。この影響で、髄膜炎という合併症を起こすこともある。

脳の腫れ、脳血管攣縮、合併症を考えると、来週の火、水、木辺りがヤマとなるだろう。術後2週間持ちこたえることができたら、取りあえず命は取り留めたと考えてもいい。

手術で右側の頭蓋骨を取り除いているが、取り除いた骨は冷凍保存しており、1ヶ月はもつので、なんとか1ヶ月後には骨を戻せるといい。

現在チューブで抜いている髄液だが、しばらくしても吸収できないようなら、水頭症の手術(シャント)が必要となる。



医師は、父のCTや、脳の模型を持ってきて、分かりやすく説明してくれた。
父の容態が安定しているようなので、帰宅した。

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