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お風呂 

洗面所まで車椅子で母がつれてくる。そして、スウェットを脱がして、下着を脱がせる。
その間、ぼくはトランクスをはいたままお風呂に入って、お湯をすこしぬるめに調節する。

ぼくが足を持ち、母が肩を持って、父を浴槽の縁に座らせる。

下半身から少しずつお湯をかけていって、おもむろに父を浴槽に入れる。ぼくは父の正面に座って、父がずり落ちないように支える。



家の風呂はちょっと自慢できるくらい広い。しかも温泉。父が退職金を全てはたいて立てた田舎暮らしの家は、マッチ箱のように小さくて、玄関もないに等しいけれど、お風呂だけはでかい。

父の自慢の我が家の風呂に、ぼくは自分が父と二人で入ることになるなんて考えたこともなかった。これまで父とはそんなに仲良く話したこともなかった。むしろ、父とも母とも、ぼくはずっと険悪だった。二人の考え方とぼくの考え方はいつも相容れなかった。

父が倒れて初めて、ぼくは両親を大切にしなければならないと心底思ったし、母はぼくの生き方を認めてくれたように感じる。



父と二人で温泉に浸かっている間、母はしばらくお風呂から出て、入浴前に散らかした物の片付けと、入浴後の準備をしに行く。その間ぼくは父と二人で温泉に浸かる。この時間だけは、父が倒れたからこそ訪れた幸福な時間であるとはっきり思う。

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